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【岩崎量示】第1回:人から与えられた役目を終え、自然の中に取り残された鉄道橋

【岩崎量示】第1回:人から与えられた役目を終え、自然の中に取り残された鉄道橋

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阿部
岩崎さんの写真集『80年目のアーチ橋』を見させていただいたんですが、この表紙の写真、ちょっと不思議な風景ですよね。
奥に森があって、真ん中の水辺に橋があって、手前にあるのは、これ切り株ですか?
岩崎
手前は切り株ですね。ここは、もともと森の中だったんです。
阿部
森の中?

 

 

岩崎
そうです。今から80年前、この辺りは一面に木が生い茂る森で、そのアーチ橋は鉄道を通すために建設されたものなんです。タウシュベツ川橋梁っていうんですけど。
阿部
タウシュベツ川橋梁、はい。
岩崎
この鉄道橋は1937年にできたんですけど、1955年になって、その森を切り開いてダムが建設されたんです。
阿部
森だった場所にダムが。
岩崎
そうなんです。糠平ダムという水力発電用のダム湖が作られました。そうすると、この場所は水の底に沈んでしまうので、線路は別のところに付け替えられました。そして、使われなくなった橋だけが取り残されたんです。
阿部
鉄道橋としての役目を終えて、そのままダムの底に放置されることになったと。短い使命だったんですね。
岩崎
この橋はそうですね。1937年から1955年までなので、20年に満たないくらいです。

その手前の切り株は、ダムを作る時に伐採されたものなんですよ。木が生えたままで水に沈めちゃうと、何かの影響で倒れて、水門に詰まっちゃったりする危険性があったので。あとは、木材としてお金にするという目的で。

阿部
ということは、60年以上前の切り株?
岩崎
はい。この場所は1年のうちの半分くらいは水に沈んでいるので、菌が繁殖しないんですよ。だから、切り株は当時の姿のまま腐らずに、60年以上も残ってるんです。
阿部
へぇー、すごいなぁ。つまり、この場所はもともと森で、そこに鉄道が通ることになり、最終的にはダムになったという軌跡を辿ってきたわけですか。

 

 

岩崎
この表紙の写真を撮ったのは、まだ水が少ない時期なんですけども、秋の終わりくらいにかけてダムが満水になるんですね。そうすると、橋は完全に沈んでしまいます。
阿部
じゃあ、まったく違う風景になるってことですよね。
岩崎
年間通すと水位が30~40メートル上下するので、時期によって景色は全然違いますね。
春の雪解け時期が最も水位が低くて、雪解け水が流れ込むにつれて水位が上がってきて、夏から秋にかけて橋が水没していき、冬の間にまた水位が下がってくるというサイクルを毎年繰り返しています。
阿部
水没しては出現するというサイクルを、もう何十年も。
岩崎
ただ、年によって水位が低い年と高い年というのがあって、例えば2016年の7月くらいは橋がほとんど沈んでいたんです。だけど、翌2017年の7月は全然水がありませんでした。
阿部
どうして、そんなに差が出るんですか?
岩崎
理由はいろいろあるんですけど、まず雪が少ないと雪解け水が流れ込んでこないので水位が上がらないというのがあります。

あと、2017年のように夏が暑いと、発電用に水をたくさん使うので、出ていく分が多くなります。それから、雨の量にも左右されますね。

阿部
なるほど。
岩崎
要するに水の入りと出のバランスなので、いろんな要素がからんでくるんです。だから、その日がどんな景色になるかっていうのは、なかなか読めないんですよね。台風で大雨でも降ると、橋はアッという間に水没してしまいますし。
阿部
1日として同じ景色ではないってことかぁ。
岩崎
タウシュベツ川橋梁は、高さが約11メートルあるんですけど、数年前のゴールデンウィークに大雨が降った時には、1日に3メートルずつくらい水位が上がって、3日か4日で完全に沈んでしまったこともありました。
阿部
そういった景色の変化って、橋という基準があるからこそ明確に感じられるんでしょうね。自然の中に取り残された橋があることで、景色が日々変化しているというのを感じられる場所でもあるというか。

 

 

岩崎
タウシュベツ川橋梁は作られてから80年を迎えたんですけど、この周囲には同じ時代に作られた橋がいくつかあるんです。写真集には、それらの橋の写真も一緒にまとめています。
阿部
その中で、今も現役で使われている橋はあるんですか?
岩崎
ありません。タウシュベツをはじめ、この辺りの橋は1936年~1938年にかけて建設されていて、帯広と十勝三股を繋ぐ国鉄の士幌線という路線になっていたんです。

その後、1955年のダム開発に伴って、別の場所に新しい鉄道橋が作られて、士幌線の線路が付け替えられたんですけど、1987年に全線が廃止になったので、今も現役で使われている橋というのはないんです。

阿部
もともと鉄道を通すために作られた橋だったから、廃線と共に役目を終えたんですね。
岩崎
そうです。
阿部
人から与えられた役目を終えて、自然の中に取り残された橋かぁ。
岩崎
だけど、単に役目を終えて取り残されただけの橋だったら、誰からも見向きもされなかったと思います。そもそも、ここは森の中だったので外から橋の姿は見えないですから。

タウシュベツ川橋梁は、ダムの建設によって姿が露出したからこそ、世の中に知られるようになった橋なんです。

 

 

—> 第2回:現地調達で作られた橋の、〝土地に還る〟という未来

 

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  • 80年目のアーチ橋


    80年目のアーチ橋

    2,160円(税込)
    建設から80年目を迎えた旧国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋を記録した写真集

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