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【岩崎量示】第4回:〝飽きた目〟だからこそ撮れるリアルな橋の姿

【岩崎量示】第4回:〝飽きた目〟だからこそ撮れるリアルな橋の姿

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阿部
岩崎さんは、2005年からタウシュベツ川橋梁の写真を撮り続けているということですが、それ以前からカメラマンとして活動されていたんですか?
岩崎
いえ。写真をちゃんと始めたのは北海道に来て、タウシュベツ川橋梁を撮るようになってからです。
阿部
そうなんですね。ご出身はどちらなんですか? 北海道に来ることになったきっかけは何だったのでしょう?
岩崎
出身は埼玉なんですけど、もともと北海道が好きで、よく旅行に来てたんです。それで、旅行ではなく、ちょっと住んでみたいなと思うようになって。引っ越してきたのは、2005年の7月ですね。
阿部
糠平に惚れ込んだポイントは、どこだったんですか?
岩崎
別に糠平に惚れ込んだってことでもないんです。単純に北海道が好きなので、糠平を拠点にして、あちこち行けたらいいなってくらいの気持ちで。その時は、宿で住み込みの仕事をしてました。
阿部
じゃあ、シンプルに「北海道で暮らしてみたい」という気持ちがきっかけで移住を。
岩崎
そうです、そうです。当時は26歳で、「とりあえず3年住んでみて、仕事がなかったら戻ればいいかな」ってくらいの軽い気持ちでしたね。戻っても29歳だから、30歳前なら仕事もなんとかなるだろうと。

まぁ、今そんなこと言う人がいたら止めますけどね。

 
一同:ははははは(笑)!
 

 

 

阿部
写真を始めたのは、タウシュベツ川橋梁を撮るためだったんですか?
岩崎
そうですね。僕が糠平に来た12年前から、「タウシュベツ川橋梁は、あと2、3年で崩れる」って言われていたんですよ。
阿部
はい。
岩崎
当時は、観光客もそんなに来る場所ではなかったですし、継続して写真を撮ってる人もいなくて。「あと2、3年で崩れるなら、写真くらい残しておいた方がいいだろうな」と思って。

だけど、自分は写真なんか撮れなかったし、カメラマンの知り合いもいなかったんですよ。漠然と「誰か撮ればいいのになぁ」なんて思ってたんですけど、人に頼むとお金もかかるし、それは大変だなって。だったら、まぁ自分で勉強して撮った方がいいなと思ったんです。技術はないけど、近くに住んでるから、数を撮ることはできるだろうと思って。

阿部
はい、はい。
岩崎
そうやって撮り始めたんですけど、意外としぶとくてですね。

 
一同:(笑)。
 

阿部
2、3年で崩れると言われていた橋を12年間撮り続けてきたのって、橋との根比べみたいな感覚もあるんですか?
岩崎
まぁ、そう言っちゃうと、あたかも橋が崩れて欲しいかのように聞こえちゃうと思うんですけど(笑)。どちらかというと、乗りかかった船だから撮ってるっていう感覚ですかね。
阿部
なるほど、橋のことを最後まで見届けようと。
岩崎
はい、そうですね。

 

 

岩崎
そもそもタウシュベツ川橋梁の写真を撮り始めた時は、崩れるまでの過程を撮っていくといいだろうなと思っていたので、当初のコンセプトからするとまだプロローグなんです。崩れていないので。

ここから先が、本当に僕が撮る予定だったものが撮れるんじゃないかなと思っています。

阿部
崩れはじめてからが本番。
岩崎
撮ろうと思っていたのは、橋が崩れて、だんだん土地に還っていくプロセスなので。

タウシュベツ川橋梁は高さ11メートル、全長が130メートルあるんですけど、このサイズのコンクリート建造物を、朽ち果てていくままに任せておく場所って、おそらく他にないと思うんですよ。

阿部
そうでしょうね。自然の中に放置された人工物の〝成れの果て〟が、どうなっていくかというのを見届けているってことですもんね。
岩崎
そうですね。コンクリートの専門家の人が視察に来ることもあるんですよ。耐久性のテストじゃないですけど、実際このサイズの建造物を毎年水に沈めながら60年も経過を観察するっていう実験もなかなかできないじゃないですか。だから、学術的にも面白い事例らしいんですよね。

 

 

阿部
今って、どのくらいのペースでタウシュベツ川橋梁の写真を撮りに行ってるんですか?
岩崎
今はですね、タイミングが合えばというか、よっぽど天気が悪くなければだいたい毎日です。
阿部
毎日!? はー!
岩崎
水位が上下する時期は、毎日景色が変わりますし、それでいて天気も違うってなると、いろんな写真が撮れますからね。

あと、やっぱり明日崩れてもおかしくないという橋なので、なるべく撮りに行くようにはしてます。家から車で30分くらいですし。

じん
毎日どういう気持ちで出かけてるんですか? 「今日はどうなってるかなー」ってワクワクしてるのか、「あー面倒くさいな」とか思いながらも運転してるのか。
岩崎
それがですね、けっこう不思議なんですけど、行くのを心待ちにしている自分がいるんです。基本的に北海道が好きだからっていうのもあるんですけど。
割と早朝に行くことが多いので、車も少なくて、景色もいいんです。気持ちいいですよー。

 
一同:へぇー。
 

岩崎
なので、北海道をドライブして、ついでに写真を撮ってるって感じですね。
阿部
毎日観光してるみたいな感覚?
岩崎
そうですね。途中でキツネだとかクマが出てきたら撮りますけど、感覚的には橋を目的地にしてドライブしてる感じですかね。
阿部
「橋を目的地にしてドライブ」かぁ。

 

 

岩崎
写真を撮ることについては飽きてもいいと思ってるんですよ、僕は。

っていうのは、観光客の人って皆さん新鮮な気持ちでここに来るじゃないですか。だから、新鮮な目で見た橋の写真というのは、たくさん撮れるんです。

阿部
あぁ。そうすると、記録としてはたくさん残りますよね。
岩崎
はい。だけど、飽きるくらい通える人っていうのはそんなにいないので、飽きた目で見て撮られたタウシュベツ川橋梁っていうのは、それはそれでいいのかなと思っていて。

だから、もしかすると自分でも飽きてるのかもしれないんですけど、でも飽きても撮りますね。新鮮な気持で行ければ、それはそれでいいかなとは思いますけど。

じん
じゃあもう、毎日淡々と。
岩崎
そうですね。実際、「今日の橋はすごいな!」みたいにテンションが上がるってことは、まずないですし。

だけど、せっかくいい場面なのに、撮り逃してるんじゃないかっていうようなことは今でもあって。

阿部
撮り逃してる? どういうことですか?
岩崎
例えば、すごく雲が綺麗だとしますよね。それで、雲を入れた写真にこだわって撮っていると、橋のたもとにキツネが歩いていても気づかない時があるんです。

だから、気を散らすっていったら変ですけど、アンテナをニュートラルに張って、ラジオでいうところのチューニングの感度を上げておくようなことは意識します。弱い電波なんだけど、ロシア語の放送が混ざるみたいなことをやりたいなと思っていて。

阿部
あぁ、細部に目を凝らすのではなく、全体を見渡しておくというか。
岩崎
そうですね。だから撮りに行く時に、〝狙い〟っていうはほとんどないんですよ。橋に向かう途中で、「今日はこういう感じかな」って思うことはあるんですけど、なるべくフラットな気持ちで行くようにしてます。

 

 

—> 第5回:写真家という場所を選ばない暮らし方

 

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